夫は何をしていたか(男性クライマー、WLBの壁に挑む)
さて、長女の側弯症について、治療決定から装具治療を暮らしの中に受け入れるまでをあれこれ書いてきました。
これまで、主に長女と私の動きについて書いてきましたが、今回は「この間に夫は何をしていたのか?」について、夫のこれまでの「両立の山登り」を振り返りつつ記載します。
結論から言うと、
① 医師の説明と装具着用説明(カメラマン役)に同席
② 受診時の送迎(出先から直行/直帰できるとき)
③ 装具についての書類提出(職場に依頼→役所に提出)
④ 家事を厚めに分担
の4つです。
比較問題でいくと、私よりは動いていません。
次女を含めた子供たちの生活についても、爺&婆より時間をさいていません。
夫はこの件に関し「できることを最低限やる」というスタンスにした模様です。
長女が年頃の女子であり「男親の自分の直接関れることが少ない」と判断したのが背景にあると踏んでいます。
そして、それでおおむね十分だったのです。
なぜか?
夫はそれまでの間、男性側からの「仕事と育児の両立」という山にごつごつと上り続け、結果として今更いきなり頑張るべきことがなかったのです。
というわけで、夫の基本キャラ及び夫のクライミングの道のりを振り返ってみます。
夫と私は類似業者。仕事を通じて結婚。ともに保健・医療・福祉をフィールドとする専門職でした。
共通プロジェクトを通して知り合ったわけですが、「一見、羊かシマウマのようにのんびり草食べてそう」なのに「いつの間にか彼の思い通りに事が運んでいる(反面、彼をおいおとそうとしている人間は、脱落するか彼に篭絡されているかどちらかだ)」という事実に「…こいつは肉食獣だ」と気づきました。
そんなところを好きになり(私の選択尺度はは相当おかしい)、向こうも私の何かが気に入ったみたいで結婚するに至ったわけです(お恥ずかしい)。
お付き合いしだしてわかったことですが、夫はもともと「仕事に追われるより、家族との時間を大切にしたい」という理由で就職を決めたらしく、当然、職場も男性の育児参加にある程度理解のある環境でした。
育児に関する制度も産休を除けば男女平等。
夫は当然のように育児に関わる心づもりでした。
そんな夫に「制度の壁」以前の「意識の壁」が待ち受けます。
夫は丁度長女の出産時に、現場から管理部門に異動し「月100時間労働は結構普通」な環境に変わっておりました。
その後その職場において、次女が小学校に上がる頃まで「激務」が続きますが、そんな中でも夫の「優先順位」は変わりません。
長女妊娠中、夫ははまだ若手で主張できず、育児は主に私という状態が続いたんですが、次女妊娠時、保育園入園に合わせ「4月の年度替えまで育休を取る!」と宣言。
一旦この宣言は通り(男性でも半年くらいとれる制度ができたばかりだったらしい)、こちらもそのつもりで上司と産育休スケジュールを詰めていたのですが、なんかよくわからん圧力で「夫は育休とっちゃダメ」みたいな感じな連絡がこちらの職場にかかり(一応夫の職場のほうが当時立場が上でした)、慌てて私の職場が人事を調整しなおす、といったことが起こり、一夫婦の生き方が企業間の軋轢を生むこととなったりしました。
企業間のいざこざなんぞ知ったこっちゃないですね。
夫はめげません。
(まあ私もめげませんが(調整が最小限になるよう仕事を思いきり前倒した))
私の育休復帰(長女年少入園、次女1歳前)と同時に行動開始。
「娘の保育園のお迎えなので定時で帰ります」「熱を出したので看護休暇ください」「その代わり、休日出勤でカバーします」→通じない。
女性職員なら通じることが通じない。
通常業務+αの成果を上げていても通じない。
果てには「最近、勤務日に残業せず、休日に出勤する輩がいる。残業代より休日出勤代のほうが手当が良いのでこういうことを行っているのではないか。慎むように」という類のお達しが、会社全般に発せられたそうです。
名指しではないですが明らかに夫のことです。
それ以降、夫は一旦定時に帰り、子どもたちを保育園に迎えに行き、夕飯を食べ、風呂に入ってから再出勤する(帰りは終電後2時ぐらいにタクシー(出費自腹!!))という勤務スタイルをとるようになりました。
当然、休日出勤も時間数は少ないながら継続です。
夫が倒れないか心配でしたが、夫は「羊の皮をかぶった肉食獣」。
「これは相手(=職場)を打ち負かすための戦争だ」と悟り、死なばもろともという気持ちで過ごしていました(こちらは持ち帰り残業しつつ、子どもを寝かしつけながら、5年日記で夫の勤怠記録や健康状態をきっちり記録)。
そうして夫は、幸いにも健康を保ったまま、成果を出し続けました。
…そのうち、業界内に「子どもを保育園に迎えに行き、一緒に入浴後、ザンバラ髪で再出勤。そして深夜2時にタクシーで帰宅する男」伝説が広く伝播することとなりました。
私も同業他社の共通の知り合いに「ご主人がお子さんお風呂に入れてから再出勤して残業してるって聞いていましたけど、実際に夜遅くに伺ったらタオルを首に巻いたジャージの男の人がいたので、伝説は実在するんだと。なんかすごいですね」と言われたものです。
ここまで、別に自慢でも自虐でも批判でも何でもありません。
事実です。すさまじい事実です。
すさまじい事実と、それに伴う(それ以上の)成果の前には、批判は徐々に収まるものなのでしょうか。
夫の申し出る「家族のための当たり前の希望」は、職場内であっさり通るようになり、同時に成果を出し続けた夫は地位も上がっていきました。
そして、管理職となった夫は「時間内勝負」を目標に掲げ、部下の人事評定のウエイトに「無駄に残業していないか」「家族を、家庭を大事にしているか」に置いたらしいです。
すごいです。
本当にすごい人間です(自慢です)。
ここに至るまで、心身共にかなり無理した夫。ちなみにがっつりとした体育会です。
中年となった今でも、心身共に当時の影響はとく出ていません。
(今後出るかもしれませんし、身体については、別の問題はあります)
…というわけで、長女の病気について、男親としてできないことは一杯あった(悲しかったらしい)ですが、できることは最大限した。そして誰にも文句を言わせなかった。
このあと、長女の手術やらなんやらで、次女のことも含め我が家は「共働き(子ども複数)」として非常に厳しい環境に置かれていくわけですが、夫は「羊が牧草食べに来たついでに病院に来たよん」「羊が牧羊犬に追われたついでに家に帰ってきたよん」という感じで、大事な時には頼りになる存在であり続けています。感謝。
但し、女親にかかるウエイトにはくらべものにもならないですが…
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